クリームやローションを塗り続けるだけでしみ・そばかすを防ぐことができるというのは、なんだか不思議で、何週間かの間に、肌の色がだんだん明るくなったりすると、有効成分が肌色の素を壊してくれたような気がするかもしれませんが、ちょっと事情は違うようです・・・。美白のテクノロジーのお話の前に、肌の色がどうやって決まるのか、そんなお話をしたいと思います。

 

ヒトの肌の色は、皮膚内部に存在するメラニン色素と、血液中のヘモグロビンやカロチンによって決まるといわれていますが、なかでもメラニン色素は最も強い影響力をもっています。

 

メラニン色素は皮膚の表皮最下層の基底層にあるメラノサイトで作られますが、そのプロセスはちょっと複雑です。アミノ酸の一種であるチロシンはドーパ、ドーパキノンに変換されます。ドーパキノンは自動酸化によってドーパクロームとなり、さらにそれがポリマー化してユウメラニンやフェオメラニンにといったメラニン色素に・・・。ほんと、めんどくさい化学反応が何回も続いて、ようやくメラニン色素が出来上がるのです。

 

これらの一連の反応のなかでキーとなるのが、「チロシナーゼ」という酵素。チロシンからドーパ・ドーパキノンを経てメラニン色素に変化するプロセスは、「チロシナーゼ」なくして語ることができません。

 

2006年に、X線構造解析という方法によってこのチロシナーゼの分子構造が解析され、この酵素の中には「銅複核錯体」というちょっと変わった活性中心が存在しており、そのおかげで、これらの化学反応がスムーズに進んでいくことが明らかになりました。

 

そう、われわれは進化の過程で、この酵素を手に入れることで、老化を引き起こす紫外線から生体システムを守るメラニン色素を作り出すことができるようになったのです。

 

日焼けの仕組みなんて基礎的なお話のように思われるかもしれませんが、こんな風に分子レベルで理解できるようになったのは、ついこの10年くらいだったりするのでした。

実はチロシナーゼの分子構造に関する論文は、化学の分野で最も権威のあるジャーナルの一つに掲載されました。それだけ、専門家の間でもインパクトのある研究成果だったということでしょう。
世の中、身近なことほど、よくわからないものなのです。


The First Crystal Structure of Tyrosinase: All Questions Answered?




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